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レジスタンストレーニングは基礎代謝を本当に上げるか?
 先日、ある講習会で、「レジスタンストレーニングによって基礎代謝が上がるとい う先生と、上がらないという先生がいるが、どちらが正しいのか?」と質問されまし た。実際、これまでの多くの研究が、レジスタンストレーニングによって代謝(エネ ルギー消費)が上昇することを報告していますが、これに反論する研究報告もありま す。また、「基礎代謝アップ!」というキャッチコピーがむやみに氾濫している感も 否めません。そこで今回は、トレーニング、筋肉量、代謝の関係について、改めてま とめてみることにしました。

【基礎代謝と安静時代謝】
 代謝は大きく、基礎代謝、安静時代謝、活動時代謝に分けることができます。基礎 代謝とは、生命の維持に必要な最小限の代謝をいい、1)前日の夕食後から12時間以 上絶食、2)横臥位で安静、3)覚醒している、4)室温20℃という条件で測ります。 安静時代謝は、椅子に安静に座っている状態で測り、基礎代謝より20%ほど高くなり ます。これは主に、座位による循環器への負荷と、姿勢維持のための筋活動による増 加分です。基礎代謝は微妙な条件の違いによって変動するため、正確に測定すること がむずかしく、研究でも安静時代謝の方が好んで用いられるようです。

【基礎代謝に影響を及ぼす要因】
 基礎代謝を測るときには、基本的に呼吸筋を除く骨格筋は弛緩しています。したがっ て、基礎代謝は体温維持のための熱生産、神経系の活動、呼吸・循環、肝臓や腎臓の 活動などによりますが、その60%近くは、熱生産とされています。骨格筋は大部分弛 緩しているものの、脱共役タンパク質(UCP-3)というタンパク質のはたらきによっ て熱を生成し、体熱生産のうちの約60%を担っていると考えられています。これらの ことから、骨格筋は基礎代謝のうちの約30%を担っていると推測されます。一方、筋、 肝臓。腎臓、褐色脂肪などでの熱生産は、甲状腺ホルモンや交感神経活動によって高 まりますので、内分泌活性や自律神経活性も基礎代謝に影響を及ぼします。

【筋肉量と基礎代謝】
 一般成人男性では、基礎代謝量は1600 kcal/日ほど、筋肉量は体重の約40%とさ れています。体重60kgの場合、24 kgの筋で1600 kcalの30%、すなわち480 kcal を 生成することになり、単純計算で、筋肉1 kg当たり20 kcal/日程度のエネルギーを 消費すると推定されます。したがって、レジスタンストレーニングによって筋肉量 を1 kg増やすと、基礎代謝量は20 kcal/日程度増える勘定になりますが、これは期 待するほど大きな数字ではないかもしれません。

【肯定的な研究】
 レジスタンストレーニングによって代謝が増えることを具体的に示した最初の研究 は、Pratleyら(1994)によるものでしょう。彼らは、50〜65歳の男性を対象に、16 週間の高強度トレーニングを行わせました。その結果、筋力が約40%、除脂肪量が 約2 kg、安静時代謝が約500 kJ/日(約120 kcal/日)増加しました。すなわち、筋 肉量1kg当たり約60 kcal/日の増加が期待されることになります。一方、トレーニン グ前後で、除脂肪量当たりの安静時代謝を比べてみると、これも有意に増加していま した。そこで、安静時の血中ホルモン濃度を調べてみると、ノルアドレナリン濃度が 約36%上昇していました。このような結果から、トレーニングによる安静時代謝の増 加は、筋肉量の増加と、交感神経活性の上昇の複合効果によるものであることが示唆 されます。その内訳は、上述の熱生産から推定すると、筋肉量の増加による部分と交 感神経活性の上昇による部分が半々くらいとなるでしょう。この研究とほぼ同様の結 果が、61〜77歳の高齢男女(Hunterら、2000)、平均年齢20歳の若年男性(Dolezal & Potteiger、1998)を対象とした研究などでも報告されています。Hunterらの報告 では、1日当たりの総代謝量も12%(約200 kcal)増加し、安静時の脂質代謝(脂質 をエネルギー基質とする割合)も上昇しています。

【否定的な研究】
 一方、レジスタンストレーニングには、代謝を高める効果をあまり期待できないと する研究もいくつかあります。代表的な研究はPoehlmanら(2002)によるものでしょ う。彼らは、若い健常女性に6ヶ月間レジスタンストレーニングを行わせた結果、除 脂肪量は平均1.3 kg増加したものの、1日当たりの総代謝量は全く変化しなかったと 報告しています。安静時代謝はわずかに増加しましたが、除脂肪量当たりに換算する と差が出ませんでした。

【トレーニング方法重要?】
 総合的に判断すると、3〜6ヶ月のレジスタンストレーニングで除脂肪量を2 kg程度 増量し、安静時代謝を40〜120 kcal/日ほど増やすことは可能でしょう。ただ、40 kcalという値は微妙な数値で、統計学的に意味をなさない場合もあるでしょう。安静 時代謝をより増やせるかどうかは、交感神経の活性化にかかっている可能性がありま す。すでにご紹介した通り、レジスタンストレーニングによる交感神経と内分泌系の 活性化には、負荷の挙上速度やセット間インターバルなど、処方に現れにくい要素が 強い影響を与えますので、トレーニングのテクニックが重要になるのではないかと思 います。



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